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スガシタの眼〜深層海流を読む〜第49回 平成16年06月08日
六本木の旧防衛庁の近くに「アモーレ」というイタリアンレストランがある。ご主人がフランス人でスイスの某製薬会社の社長という真理子さんの紹介で数名集まって会食した。入って右側がゆったりとしたスペースのカウンター席になっており、左側壁沿いにテーブル席が並んでいる。カウンターの向こうには厨房が一望でき、室内に広々とした空間を演出している。ワインと料理も美味しく、雰囲気もアットホームな感じがする。店内は木曜日の夜とあって混んでいる。二十代半ばかと想われる女性がひとりで注文を取り、料理を出しているのだが、動きに無駄がなくよく働く。上質の店には上質のスタッフがいるものだなあと感心した。どのような仕事でも意欲をもって前向きに取り組んでいれば良い結果が出る。その逆は集中力を欠いてミスが多くなる。さて、その日は大いに盛り上がったが、メンバーのひとり、書家のK女史に「高杉晋作の辞世の句というのをご存知ですか。」と聞かれた。「面白きこともなき世を面白く〜」でしょうと筆者が返事をしたら「えっ、よくご存知ですね。その上の句を読んだところで亡くなったんですね」と彼女が顔を覗き込むように言ったので「えぇ、でも下の句もあるんです。側にいた野村望東尼という尼僧が"すみなすものは心なりけり"という下の句を書くと晋作は最後に満足そうに頷いたという逸話が残っています。」と答えたら、K女史に大いに感心されてしまった。K女史は日本雅藝倶楽部という書道や陶芸、和歌などのいわばお稽古事のサロンを主宰している。筆者は司馬遼太郎の愛読者でほぼその作品は読了している。「龍馬がゆく」、「坂の上の雲」、「峠」などが代表作といえるが、「世に棲む日々」は高杉晋作、吉田松蔭など松下村塾の面々が話の中心となっている。K女史にそのことを言ったら「世に棲む日々」とメモしてぜひ読んでみますとのことだった。週末に近くの書店に行った時、もうひとつ高杉晋作が主人公ではないが、冒頭から登場する面白い作品があることを思い出した。「十一番目の志士」という題名だが、筆者が二十代の頃読んだ司馬作品の最初の本である。偶然書店で見つけ、その後次々と司馬遼太郎の名作を読むきっかけとなった。久しぶりに文藝春秋の文庫本上下を買ってみると初版は1974年11月25日、なんとその後版を重ねて2003年9月25日現在第45刷となっている。多くの日本人が読んでいるのだ。さて、先週末の未明の年金改革法案の成立を見て、あらためて日本の政治の混迷振りが露呈された。この年金案の成立で本当に我々の老後は安泰なのか。まじめに働く人々にとって住みやすい社会となるのか。7月の参院選挙で国民はその答えを出さなければならない。前述したレストランの女性スタッフのようにひたむきに働く市井の人々の頑張りが戦後の廃墟から日本を経済大国にまで復興させた。今回、デフレを克服して、日本経済が復活するためには、高杉晋作や坂本龍馬のような素晴らしい日本人のDNA(遺伝子)を引き継ぐ若い世代がひとりでも多く才能を開花できるような社会を作ることではないだろうか。だから魅力溢れる新興企業の台頭こそ、ニッポン復活の原動力となるはずである。
<今週注目の本>
司馬遼太郎作品集の中から 「世に棲む日々」、「十一番目の志士」、「歴史を考える」、「余談として」 以上文藝春秋(文春文庫)。
経済関係では「日本の景気」-復活の兆しはここにある- 嶋中雄二著(角川書店)
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