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スガシタの眼〜深層海流を読む〜第32回 平成15年9月22日
「兵は詭道なり」
古代中国孫子の兵法の中に「兵は詭道(きどう)なり」という言葉がある。直訳すれば「戦いとは相手を欺くことである」という意味になる。この孫子の戦法は弱者が強者を倒すための手段であり、現代で言えば情報戦でもある。今回の自民党総裁選の結果を見ると小泉首相はまさにこの情報心理戦法によって勝利した。小泉グループの基礎票(森、山崎、旧加藤派の合計)は100票。国会議員の総数は357名で3分の1にも達しない。最大派閥の橋本派は100名、堀内派や江藤、亀井派が合縦連衡に成功していれば小泉氏に勝ち目はなかった。ところが橋本派を見事に分断、堀内派も取り込んで第1回投票で過半数を制した。小泉首相は若いときから歴史小説を好んで読んだと言う。前に紹介した「政治家の本棚」(早野透著、朝日新聞社)の中で、学生時代に井上靖の「風林火山」や司馬遼太郎の「坂の上の雲」など多数の歴史小説を読破し人生観を培ったと述懐している。歴史を通じて人間の心理の動きに精通している小泉首相が「人心一新」の内閣改造に成功し、きたる解散総選挙で圧勝することができるかどうかいよいよ正念場をむかえる。49歳の安部晋三氏を幹事長に大抜擢したことによって既に「清新内閣」のイメージが出てきており、野党にとっては手ごわい相手となる。まさに小泉純一郎という政治家は「政局の天才」であり、敵の意表を突く奇策の名人でもある。そんなことを考えながら今週は歴史小説、時代小説を読んだ。まずは伴野朗の「呉子起つ」。孫子とともに中国兵法の始祖といわれ春秋戦国時代を闘い抜いた"連戦連勝"最強の武将伝。もうひとつは隅田川御用帳シリーズで「おぼろ舟」「花の闇」「蛍籠」「宵しぐれ」「雁の宿」と続く。著者は藤原緋沙子さん。最近とあるパーティーでお会いした時代小説の新進作家だ。近著の「雁の宿」を読了したが江戸の町を舞台に主人公の剣客塙十四郎を取り巻く小話がオムニバス風に構成されている。もともとは脚本家として活躍中の書き手だけに読みやすい肩の凝らない楽しさがある。最後に当面の日本経済のゆくえについては今週発売の雑誌「財界」に筆者の記事が掲載されますのでご覧いただければと思います。
<今週注目の本>
伴野朗著「呉子起つ」(祥伝社)
藤原緋沙子著「雁の宿」隅田川御用帳シリーズ
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